ガーデニア Co./カワグチタケシ
*
ぬくい雨とつめたい雨が交互に降る
六月とジューンのあいだの青い溝
雨が上がった朝
夏至の朝、光について考える
前を歩く女が引く
空のキャリーバッグのキャスター音が低く響く道
その音に先導されて
駅へ向かう
十数名の生徒たちがめいめいのピアニカで
勝手なメロディを吹き鳴らす
その不協和音に絡む単調なスネアドラム
イメージするな
脳に像を結ぶな
夏至の朝、街は白いガーデニアの香りに包まれる
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娘たちはパリパリと音を立て
高い空の下でレタスを食べている
二枚のサッシ窓にはさまれた蝿は脱出をあきらめ
静寂が耳の中で耳鳴りに変わる
気がつけ
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