布地の下/A道化
 



しとり
しとり
肩が
ひとつ浴び終えた白い固形石鹸のように、しとり
うな垂れる夜だ
秋の、


始めから用途のない石鹸水の
最後まで澄めない、白濁
いつまでも済めない、白濁
石鹸水の滴下のような泣き方に込めた白濁の
その発覚を
どこか望んでしまって


このわたしの肩だけではなく
あのあなたの肩だけではなく
あらゆる肩が
ひとつ浴び終えた白い固形石鹸のように、しとり
うな垂れてもよい夜から、仰がねばならぬ朝だ
秋の、


朝には、どうしても肩は濡れ衣にさえ喜んでしまう
朝には、今のところ呼吸の白濁を隠滅できてしまう
整えと命じ、整えと封じ、朝には、目を閉じる代わりの布地
優しく見える偽名のような、長袖の布地
その下にわたしの肩が、あなたの肩が、あらゆる肩が、その下に居る朝だ
ああ、秋の、



2004.9.14.
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