此の夏は何時もよりも暑い/有邑空玖
終わらない夏に迷い込んだ
遠ざかる海の青と君までの距離と
どうしても掴めない明日への道標(みちしるべ)
灰色の街は誰も居ないよ
壁の落書き程度の罪と罰
遊泳区域の檻から抜け出した金魚
額はもう汗だくで
歩き続けても堤防は途切れない
砂を噛んで海水を口に含んでも
連れていってはくれないから
涙だけは海に還ると信じて居る
此の夏は何時もよりも数倍暑く
永い気がした
眩暈と覚醒の繰り返し
誰も居ない灰色の街で
書きなぐる罪と罰
永い夏
もう 何処へも行けないよ
君までの距離は開くばかり
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