邂逅/吉原 麻
電話がいつなるかわからないから、お風呂にはいるのはもう少しあとにしよう。
昨日使った苺のにおいのシャンプーは、賞味期限が切れているかもしれない。
今年できあがったばかりの梅酒に氷を落として、ハイライトの空き箱を数える。
こうしている間にも、彼はどうなっているのだろ。
2週間前までは、ふつかにいっぺん電話がきた。
それが、2週間前からこなくなった。
こっちから連絡をとる方法が無いなんて、信じられないことだけど。
正直困ったことに、本当にどうしようもない。
彼は、病院の名前も教えてくれなかった。
でもでもよく考えてみる、けれど
彼の名前なんて本物かどうかも怪しいし、住んでいる場所だって転々としていた。
ためしに最後に会った部屋へ行ってみたけど、違う人が営んでた。
梅酒2杯で酔ってしまった私は、今日は彼のこと考えるのを忘れた。
とうとう彼は本格的に頭がどうにかなって、電話もかけられなくなったのだろ。
そう、思うことにした。
最後に彼に会った日、私は生きていたんだろか。
たしか、病院に行かされたのは私。
それに、ここはどこなんだろ。
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