「百年樹」/月乃助
{引用=
風に想う
均等な枝は垂直に ―▲
はてなく
天蓋にむけられ
無数の曲直はいまだに葉をもつ さかさまに立つロンバーディア
やせた巨人がゆれ、かしぎ 街のどの家よりも高い身に
葡萄の蔓さながら枝を空に根のように かなたへ張り巡らして、
大地に根をおろすよりも空色にそまり 虚心に触れ
陽や月の 雲の間に生きる姿それが ほんとうのありようなはず
地にあって身動きのできない身などでなく 空の精気を吸い込む、
その体の中を空洞にし、誰もが自分を大切にし中心におくのに、
身をうちから けずるように哀しく生きている
― あたしは、ふれてしまった。だから、
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