anyone,anywhere/瑠王
 
ひどく疲れた時ほど
眠るのが怖い
このまま孤独の名前を
受け継いでしまうんじゃないか、と
そのまま全てが書きかけのまま
止まってしまうようで

帰りに知らない店に足を向けて
名前もわからない酒を煽ってみる
大体地名が多い
空のグラスはなにより現実
指が水滴を感じて
水滴は私を認識している
時折、掌に花弁が落ちてくるけど
ふっ、と吹いてしまう
握りしめかたを忘れたんだ
申し訳ない
傷つけるつもりはなかった

あらゆるところで
私は本名を名乗る
あらゆるところで
偶像的に誰かに生きてゆく
誰かの想像は私を誇張する
しかし私は唯一人
グラスの氷が溶けるように
私は人知れず溶けてゆく

誰かの体温で私は形を失い
最後の現実は一気に飲み干す
私は何処へもいかない
それがせめて自分のために

彼は言った
"あなたには皆の期待に応える義務がある"と



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