ひとみのうた/木立 悟
 


走り出せばついてくる
どこか高みにいるものが
消えかけた標を撫でている
棄てられた路を撫でている



成層圏が
一匹の猫の動きを真似ている
泣き出しそうな笑顔を浮かべ
雨の熟語を喰んでいる



午後の光のなかの鉄塊
光のかたちに刺さる草
沈んだように動かない
ふたつの色に動かない



金に煙る緑の原に
反転した光の炎が立っていて
風に大きくも小さくもなり
鉄だけを照らして立ちつづけている



とうの昔に忘れ去られた
古い瞳に鳴り響くもの
高みへと 高みへと
瞳の行方を映すもの



空をつくるかけらになるだろう
[次のページ]
戻る   Point(2)