ノート(症例 1〜4)/木立 悟
 






背後の鏡を
窓を割りたい
何かが映る
ただそのことが許せないから


頭のうしろのお偉方を
何度も何度も叩いている
右で左で
平手で拳で
目の前に浮かぶひとつの声から
決して目をそらすことなく
叩きつづけている


背後に立ち止まった足音が
どこにも行かずにそこに居て
振り返ると音の姿が
ゆっくりほどけて消えかけていた


目の前に 
目の前ではないものがつらなると
ゆっくり歩かざるを得なくなる
それらを見たいし 見たくないから
変わりつづける色を浴び
変わりつづける音に染まるから















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