ノックする音/kuane
 
蛍光灯の光の中で呼吸をしてる

僕が唯一僕になれる世界は

時間や空気や外の世界との境界線を

消したり

歪めたり

作り出したり

誇示したり

映し出したりしながら

何度も、何度も、

何度も、何度も、

僕の心臓をノックして

早くしろ、早くしろと騒ぎ立て

しつこく耳元で僕に問いかける

「明日死ぬなら何かするかい?」

「きっと何もしないだろうね」

「一週間後なら何かするかな?」

「いいや、気がついたら何もしてないだろう」

「じゃあ、1ヶ月後なら」

「何かしようとするかもしれないけど、すぐに死ぬからと何もしないさ」

「それなら一年後は?」

「まだ時間があると言って、結局何もしないよ」

「10年後ならどうだろう?」

「死ぬことを忘れて何もしないさ」

こんな言い訳をいつも唱え

偽者と虚像で出来た日常という世界に逃げ出す

今日もノックする音が聞こえる

今日も僕は逃げ出してる
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