途方の暮れ方/笠原 ちひろ
 
陽が射す春、昼ひなか
わたしは道に迷いに出かけた
途方に暮れる練習をするために


よいとわるいの二元性、
どちらの側にもつきたくなかったわたしは、
そのぎりぎりの
まんなかで
屹立していなければならないと信じていて、

それはとどのつまり、途方に暮れることと同義なのだった



まぶしい夏、青のなか
わたしは海図をもたずに漕ぎ出した
途方に暮れる練習をするために


よいとわるいの二元性、
どちらの人にもなりきれなかったわたしは、
そのぎりぎりの
まんなかで
屹立していなければならないと信じていて、

それはとどのつまり、途方に暮れることと同義なのだった




そして秋、
さびしい季節だとひとはいう

けれども、金木犀のきいろの季節に
やっとわたしはそれをみつけた

つつみこむもの
二元性の外にあるもの




すべてをつつみこむものをよりどころにすれば
途方に暮れることを怖がることはない


わたしはもう
練習することなく
安心して途方に暮れることができる
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