僕の音/キムラタツオ
鳥を探して
走り続ける
ごおごおがつがつと
びくびくがるがると
僕の体の音が聞こえてくる
耳の奥で
耳の奥で
目に見えない僕の音
個性とかアイデンなんとかとか
アプリオリとかDNAとか
そんな下らないものには
関係ない僕の音だ
表層でない
奥深くから
聞こえる僕
もっともっと走ろう
巨大になる僕の音
息の音 血の音
息の音 血の音 鼓動の音
息の音 血の音 嵐の音 滝の音 爆発の音
銃の音。虐殺の音。悲鳴、慟哭、懇願、
細胞 血 僕!!!!!!
もっともっっっっ
っっと走り続けると、
僕の彼方から
鳥の鳴き声が聞こえる
僕が探していたあの幾千の鳥たちだ
喧しく囀りかえす
幾千の嘴
幾億の羽
僕の中に鳥がいる
それは僕から世界に落ちる
鳥たちの囀り
僕の中は
世界より高い
鳥は空から堕ちるのではない
鳥は僕から堕ちていくのだ
走り続け
走り続け
僕は鳥の血の音を
手に入れる
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