新・日本現代詩文庫59『水野ひかる詩集』/渡 ひろこ
二行である。
ここに第一詩集ならではの若い陶酔を感じる。
惹きつけるような鮮やかな紅色をそこに見た思いだった。
母になった女が娘にそっと差し出すちいさなひかる卵/生命を宿
す女の身体は水を湛えて/孵化し脱皮をくりかえす(中略)蛇を
踏みつづけてきた女の歴史
(第七詩集『抱卵期』より「snake・みずのおんな」
「産む」という性を通過し、役割を経てきた第七詩集からは、
深みのある落ち着いた朱色が、磨かれた艶を放っている。
女性詩人として成熟度の変遷が、詩集を重ねていく度に濃く深く沁みてくる、
読み応えのある詩集である。ぜひ一読していただきたい。
2009年『詩と思想』10月号掲載
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