新・日本現代詩文庫59『水野ひかる詩集』/渡 ひろこ
 
著者二十代で刊行した第一詩集から第七詩集まで、
半世紀に渡る鋭利な感性の詩編とエッセイからなる一冊である。
この凝縮した水野ひかる氏の世界は、
幾重に年月を経ようとも衰えない「女性力」を感じる。
つまり女として魅了される感性が、娘、妻、母、祖母と
求められる役割が変わろうとも、
決して色褪せず段階を追うごとに深みを増してくる。
女性としてこんなに美しいグラデーションを、
詩集で描ける詩人はそういないのではないだろうか。

 ことしもこんなにひどく/障子は愛を吸いとってしまった
            (第一詩集『鋲』より「十二月のことば」

これはこの作品第一連冒頭の二行
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