批評を書く前に/生田
 
 批評、なのだろうか、私は、だって感想と批評の違いなんかわかりゃあしないんだ。いっちゃえば付属された文でさ、パロディだって笑われそうなさ、批評も作品だなんて怖くていえやしない、そんな弱気ささ、若い恋のようだね、傲慢な付言でもしなければ立っていられそうにない。
 忘れられちまった約束を覚えてるの、切れちまったような手ごたえの糸のかたっぽうを握ってんだ、みたいに忘れられてないと思いたくて、手繰れないんだ。おい、覚えてますか、批評について話したことをさ、その時に約束したと思ったのは私のほうだけだったのか。手を離した理由なんかいらないから、読んでくれ。
 私の批評はまったくスマートじゃないし、的確でもない。そらそうだ、私にとっちゃ批評というのは都合した形に過ぎなくて、伝えたいのは軒並みな批評では伝えらんない別のところにあるんだから。なんてね、まず先に付言、というより言い訳をするだけしとく、これで逃げられないよ。私は批評を書く、そして謝らないと宣言する。そう宣言して、はじめます。
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