空は泣いてなどいない/たちばなまこと
泣いて
泣かないで
つめたい雨が心臓に流れこむ
あなた
わたし
だれか
いいえ あなたの
熱い 肩や指先の
感触たちがおしゃべりする
わたしのからだに
夏が帰ってきたみたいだよ
耳から
ひとつの秋がそそがれる
濡れてひかる
赤い落ち葉を拾う
ひとつの終わり
ひとつの始まり
プレリュードが凍えてもなお
顔を上げ
凛と立つ
欠けているときほど
ほしいよ
高まりが
太陽の裏側まで
いってしまうほどに
いつまでもうつくしい人と
呼ばれていたい
愛されることに
慣れてしまっている
「どうしたの?
いったい
きみはどうしたんだい
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