指といとなみ/木立 悟
 


細い鏡が指の背にあり
白と黒を映している
森のような空のような
月の光を映している


午後の終わり夜のはじまり
夜の終わり夜のはじまり
頬を乗せる重なりの
離れがたく淡いつらなり


つま先から原 原から胸に
波うつからだを聴いている
宙を割る赤いまばたき
隣の夜に話しかける夜


ふたりの森の王が争い
雪の上にしるしを残す
胸を裂かれた王は空に消え
頭を裂かれた王は地に沈む


指は羽音を憶えていて
縦にめくり 横にめくる
風はやまず つながりやまず
透る壁を建ててゆく


とらえようとするものを
すりぬけてゆくむらさきたち
いつかは終わるいとなみの
行方しれない行方を描く




















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