白い記憶/殿岡秀秋
 
い星
が見える。それが大きくなってシーツが巨大な烏賊のように泳い
できて、再びぼくをくるもうとする。
ぼくはもういやだという気持ちと、もう一度くるまれてみたいと
いう気持ちのふたつを感じている。シーツが柔らかくぼくをくる
んでいくときは、なつかしいような気持ちになるが、しだいに締
まってくると苦しくて息ができなくなる。限界だと感じたときに、
シーツは回りながらほどけていく。ぼくのからだも回転して勢い
がついて闇に放りだされる。きっとまたベッドが受けとめてくれ
ると期待するが、なかなか現れない。ぼくはどこまでも深い闇の
中に落ちていく。
眼があく。心臓がどきどきしている。シーツにくるまれていると
きの感触が胸のあたりに残っている。
もういちど寝て、夢のなかで柔らかく白いシーツにくるまれたい
気持ちになった。眼を瞑ると青や紫の星雲の奥に白く小さな星が
光って、しだいに大きくなり、烏賊のようなシーツが泳いでくる
のが見える。

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