この世界の片隅のバランス オブ パワー/N.K.
 
やかさで
虫の勤勉な野望に立ちはだかる
つまりは 夏から秋への移ろいなど
百日紅には意味がない

百日紅は紅く自分の季節を強靭に持続させる
その鳴く音で虫は自己の覇権を周囲に唱える
安易な折衷案など
役にたたないという様子で

この時 この世界の片隅で
小さな季節のバランス オブ パワーにより
日頃 我々をこの世界に縛り付けている
退屈な四季の移ろいからの
独立を意図した生活圏が ひっそりと
立ち昇り行く

手元ではじいたコインが偶然立ったかのように
その場で私は息を潜める じっと
不確定性原理とはどういうことだったかと
頭の片隅で問いながら

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