遠雷/ホロウ・シカエルボク
 



月の眠る丘に
最低限の荷物を隠して
遠雷が鼓膜を脅かす
暗がる夜に僕たちは
つながりと呼べるものの
一切を断ち切った
淋しくはなかった
悲しくもなかった
たまたまそこにあったものなど
望んで結ばれた
互いの瞳とは釣り合わないものだ


夜行列車に記された行先は
幼いころに読んだ
空想小説の舞台と同じ名前
はやる気持ちを抑えながら
厳かさを意識して
滑稽な十代のふたりは
静かに手を握り合って
欠伸を噛み殺した駅員から
朝露が跳ねたような
輝く切符を受け取った
ほら、僕たちの夢だ
生真面目に頷いて
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