無題/ミズタマ
花模様の布団に寝たわたしは、花畑のなかに居る夢をみました
夢の中でわたしのからだは、まるでちょうちょうのやうに軽く
このままあのお山のむこうへ、とんでいけそうな気がしましたが
花のなかにたおれこんでしまい
むせかえるやうな花の香がわたしを包み
嗚呼、もうわたしはここから逃れられないのだ、と
嗚呼、この香やあの小さな虫たちがわたしの体を蝕んでゆき、
いづれはわたしも毎日ここから青い空ばかりを眺めるだけなのだ、と
そう観念したのです
*
そこでわたしは夢から覚めたのですが
それが夢だとわかるや、わたしはひどく落胆しました
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