えこながいた/人 さわこ
 
閉じたまぶたの裏側
流行のカフェ
野球場
交差点
カーテンを開けて見た窓枠の景色
ピースサインの谷間

病院の待合室
えこなはいつも、私を待ち伏せるかの様にそこにいた

えこなはそこで受付をしていた
寿命が顔にかかれた人々の名前を
えこなはただ事務的に呼び続けていた
えこなにはいくつかのものがなかった
たとえば、怒り
たとえば、向上心
ひとつのものを大勢で分け合うという概念
雨を疎む心
直感
だからときどき、何を考えているか理解できないときがあった

数年前、私が足を骨折したときも
えこなは私のギプスをいつまでも不思議そうに眺めていた
文字をかいたり
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