世の中がどんなに変化しても、人生は家族で始まり、家族で終わる/吉田ぐんじょう
 
をなくしはじめた
今ではわたしを見ても
あれ おばさん
とか
キタヤマさんじゃねえの
とか
サダボウよう
とか
その時々で違う名前を呼ぶようになった
だからわたしはおばさんになったり
キタヤマさんになったりサダボウになったりするのに忙しい

祖母が一度だけ
ゆうちゃん
とわたしの名前を間違えずに呼んでくれたときには
もう遅かった
わたしはすでにわたし自身である
ゆうちゃんという女がどんな人間だったか
全然わからなくなっていたのだった
しいん、とするのがいやだったから
ゆいいつ覚えていた
桂枝雀のものまねをすると
祖母が笑いながら泣いたからわたしも泣いた
それからしばらく二人で抱きあって
ごうごうと嵐のように泣いたのだった









Other things may change us, but we start and end with the family.

---Anthony Brandt

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