ひとつ さえずり/木立 悟
 






虹の渦がひとつ
遠くと近く
ふたつの雨を横切った
誰もいない道の終わりに


とめどないものがとまるとき
夜の鴉が一羽増すとき
心は天地の境をひらき
冬のはじまりをのぞきこむ


冬が冬に手わたすもの
はざまに立つ子の頬は冷え
空を映す 
眼を映す
空を映した眼を映す


水の上に水で描く
残るはずのない絵が残りつづけて
底へ底へ底へ重なり
波や過ぎる生きものに触れ
天のように変わりつづける


廃屋に刺さる
藍の横顔
さえずりが置く闇
枝をこぼれ
土を染める


遊べ 遊べ
異なれ 変われ
ぽつりと華や
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