anti-business/邦秋
 
「ごちそうさま」。
「ありがとうございました」。


 心からおいしいと思った気持ちが
 自然と口からこぼれ出た。

 それに対して満面の笑みで、
 感謝の言葉、返ってきた。

 生きている中で嬉しい瞬間、
 笑顔で気持ちを交わすこと。

 気持ちいいな、思えたように、
 ただ、それだけでよかったのに。

 通り過ぎた別の制服は、
 私の、10秒前までの、

 安らぎの跡を拭い去っては、
 すぐ、次の人、迎えていた。

 まるで恋人が家に来る前の、
 証拠隠滅、がんばるかのよう。

 回転率さえ、考えなければ、
 儲けに、目さえ眩まなければ、

 たぶん、おそらく、気持ちのいいまま、
 笑顔のままで、この思い出は幕、閉じたのに。

「素敵な現実、ごちそうさま。
 どうも、ありがとうございました。」
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