胸の厚さも/草野大悟
 
手のぬくもりも
胸の厚さも
すっかり覚えてしまった

わたしの中には
いつも兄ちゃんの声がある
兄ちゃんの呼吸がある



むかしむかし
あるところに ひとりの少年が
おりました。
少年は空が大好きで
いつも だまって 見つめておりました。
少年がいくら
お話ししても
空は一言も口をきいては
くれませんでした。

ある日 少年が
いつものように
窓にもたれながら
星の輝く空を見つめていた
その時
戸を叩く音がきこえてきます
トン トン・・・トン トン・・・

少年は
そっと 戸に近づいてゆきました
そして、そっと戸を開いてみましたが

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