出会いの無い別れが君にあって/冬貞
蔦を植えた君を風が抜ける
触れる者を待ち
褪せたドアノブに
風上となって立つ貴方の水滴が滑り落ちる
ゆっくり
さわらず、
傘立ての底が濡れてゆく
一滴を撫でた貴方の皺よりも
深く根を張った目尻よりも
窓際に立つ揺れた目蓋に
退ける言葉の失せた儚さを思った
蛹を起さぬ為、何人もの詩人がこの世を去った
出会いの無い別れが君にあって
鳥が低く飛び帰ってゆく家に、私は花を差した
目前の滴る傘が数多を床を濡らす
傍に居なかった肌の匂いは
昨日に増して君に似通い
声をださず、ベッドにもたれた
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