悲鳴の周波数をあわせて/あぐり
夜中のうちに
鍋の底で腐っていくとろけた大根が
少しでも悲鳴をあげてくれれば
わたしはすぐに火を点けて救いだしてやれるよ
*
流れる景色を見つめている
次々と集まり出すこの電車内の人、ひと、ひ、と
あんまり一緒にいすぎると腐っちゃうの
(やわらかくやわらかくとろけていく)
携帯の画面で髪をせってぃんぐしている男子高校生がわたしにはわからないままだから
今すぐ悲鳴をあげてくれたら
わたしはきみをあいせたかもしれないのに
*
ねぇどうして誰も声をあげないのかな
わたしには届かない周波数で喚き散らされた たすけて が
この世界中の空や海を覆い尽くして
いつの日か(そう遠くはない日に)
わたし
[次のページ]
戻る 編 削 Point(7)