リアリストと月/あ。
 



ふらふらと舞い飛んでいた葉っぱはやがて闇に溶け
追うのを諦めた視線を再び空へ戻す
先ほどの風で千切れた雲が薄くのびて流れてゆき
下弦の月がその向こう側から不意に顔を出す


太陽よりも強い光を持たない月は
編み目の粗い繊維みたいな雲のすき間から
触れたら折れてしまいそうなほどにか細い光を放ち
それは薄命の美人を連想させ
全ての美しさが永遠ではないことを嘆く


泣きたい気分で胸が詰まりそうになったとき
茂みの向こうから聞こえる木を打つ甲高い音と
火の用心を唱えている男性達の野太い声が聞こえ
それをきっかけにリアリストに戻ったわたしは
茂みを抜けていつもの散歩道まで引き返すと
自動販売機でペットボトルのコーラを買った

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