リアリストと月/あ。
夜の散歩中に迷い込んだ名も知らない小さな神社は
まちあかりも遮ってしまう茂みに覆われている
自他共に認めるリアリストのわたしでも
物の怪の姿を探してしまいそうになり
風で葉がこすれるかさかさとした音も
見えない誰かのささやき声ではないかと
あらぬ疑いをかけてしまう
星の数が増えていると感じたのは
恐らくあかりがないせいなのだろう
余分なものが省かれているばかりか
必要なものまでが足りないようなこの空間で
頼りない星の瞬きだけが唯一の存在物のようで
夜風がもう一度大きく吹き
茂みがざあっと鳴き声をあげる
目の前を通り過ぎる一枚の葉っぱを視線が追う
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