めぐり会うひと/恋月 ぴの
 
「秋の夜は果てしなく長いのだから」と
あなたは言って
舳先の行く手を確かめながらゆっくりと櫂をこぐ

  おとこのひとに体を許す

例え今夜がはじめてではないにしても
月明かりは艶かしく
甘露のひとしずくはあなたの指先に夢・うつつ・うつつ

あなた
わたしを組し抱くあなたって何人目のあなたになるんだろう

  別に数えている訳じゃない

ぬかるみの奥へと進むにつれ
けだものの
あまりのけだものらしさに櫂をこぐ手は慄き
慄いて

やがてあなたは赤い鳥居のうねうね立ち並ぶ丘の上に立つ
 膝まづく

そして「めぐり会う」とはこんな事かと腰から抜いた小太刀で
 ぐさり奈落の底を突く




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