ムカデと毛虫/ヨルノテガム
極めて小さいムカデが肘置きに隠れていて
散歩よろしく腕の白いところを這い回ってすぐに引っ込む
探しても見つからない陰に隠れてしまっていなくなる
何十本かの足のざわめきが 今か今かと
部屋の八方の何処かを撫で踏みしめているのだ
*
毛虫の毒は 皮膚を赤く腫れ上がらせ
虫型の筋を 痒さと共に刻印する
壁をつたい落下し、また壁をつたい落下し
人の棲み家へ にじり寄る
血を握り締めたような体を 毒の産毛で覆い
白い素肌が毛虫の止まり木となる
毛虫の顔と目が合ったときには
すでに何処かにミミズ腫れは浮かび 痛みが走り
柔肌を硬直させている跡形を知る
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