亡国と私達の行方/テシノ
その夜私達は走っていた
23時に閉まってしまう田舎の不便なコンビニ目指し
小雨に光る道を金木犀の香る闇を
友と名を呼び合いながら叫びながら笑いながら
その年はある国が消えようとしており世界は慌てていたのだが
私達にはコンビニの明かりが消える事の方がはるかに重大事件だった
国なんか滅びてもよかった 例え地球が崩壊しても
そこで待っていろよコンビニ 私達は腹ぺこなのだ
誘惑は道端の自動販売機 だが私達に妥協はない
目指すものあらばひたすらに走る阿呆ばかりだったのだ
国だって消えてしまう 私達などものの数でもないとは知らない
酸欠脳で何も考えずに走れた幸せだったのかも知れな
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