潮騒/
小川 葉
このからだの中に
海がある
真っ赤な血が
夜よりもくらい暗闇で
波打っている
今も確かに
沖のかもめが
今鳴いた
わたしの中で
確かに今
浜辺から続く道を
手をつないで
母と歩く
どこまでも歩いて
またどこかから
どこかへ
目を開けると
光があると思っていた
そこにあるものと
ここにあるわたしが
ひとつになって
また目を瞑る
なにもかも
消えてなくなるまで
潮騒の音だけが
聞こえている
戻る
編
削
Point
(3)