潮騒/小川 葉
 
 
 
このからだの中に
海がある
真っ赤な血が
夜よりもくらい暗闇で
波打っている
今も確かに

沖のかもめが
今鳴いた
わたしの中で
確かに今

浜辺から続く道を
手をつないで
母と歩く
どこまでも歩いて
またどこかから
どこかへ

目を開けると
光があると思っていた
そこにあるものと
ここにあるわたしが
ひとつになって

また目を瞑る
なにもかも
消えてなくなるまで
潮騒の音だけが
聞こえている
 
 
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