新宿/熊野とろろ
誰かに話しかけてほしかった
誰でもいい誰かさんに「今夜も街は雨なのですか」と
尋ねようか、どうしようか
僕は今、新宿東口に居て
途方もなく眠たげなんだけどさ
ゴキブリだらけの
だらけきったカプセルホテルで
彼らは自分のことで精一杯だからと
血液を逆流させるのだ
その上、図々しくも皆が纏まって器用にひとつになる
僕は時計の針とにらめっこ
どれくらい此処で彼らは、
彼女らは涙を流したのだろう
誰にも見せない涙の粒を
皮肉にもまた人の手によって
掃かれていくけれど、
僕は語りだすことが出来なかった
僕は見ているようで何も見えて
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