『月台』/東雲 李葉
 
ずっと遠くを眺めているの。
ずっとずっと昔からそうしてきたような気がする。
電車の窓から外を見てるとふいに泣きたくなってくるの。
明かりの薄れていく速度が私をどこかに連れ去りそうで、
窓に映る私の姿が別の誰かな気がするの。

黒い服がお気に入り。
だって夜とお友達になれるから。
明け方には私は醜い魚になって、
海藻みたいに揺らめくビルを瞬きもせずに眺めている。

見晴らしのいい丘を知ってる?
そこに月は乗っかるかしら。
星は歴史を紡ぎ続けて、
あるいは遠い道草をして。
月は冷たい光を放ち、
泣きだしそうな私を見ている。

隣の他人は眠りこけ。
前の他人は無関心を貼りつける。
私だけが世界に一人、
なんて、あるはずないのに。
私だけが月の綺麗なこんな夜に、
冷たい光に苛まれ座り込んでしまいたくなる。
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