[fiction]/あやさめ
 
電気のつかない夕暮れ時の逆さまな空
名詞の数だけ開かれた窓の向こうに
鉛筆を転がして進んでは後戻りする

形容された全ての柔らかい眠たさを
放り投げてもう一度ドアを閉じるその部屋で
彼らが昔々の物語を気づかないまま挟んで
繋げては切り取って粉々にしてはしゃがみこむ

 ─目を閉ざされた水たまりをよけて
  映りながら笑う彼らの魂なんてなかったから
  顔なんて最初からなかったらもっと楽だろう─

レンズだけいくつも重ねて散乱した単語たち
ばらばらに並べて読み返す気持ちから無視される


勝手に突き詰められた空想はついでに消されて
記号と
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