気付かされたひと/恋月 ぴの
 
あのね

とりあえず声に出してみた
答えなんかでた訳じゃ無いし
そんなものはなから無かったりする

えっとさぁ

次のことば続かなくて
それでも携帯の画面へ逃げ込むのだけはぐっと堪えた

うん。わたしにしては上出来だね

それでも、あなたと目を合わせられなくて
ウジウジしている
そんな自分がだいっきらいで
「わたし何やってんのだろう」って思ってしまう

それを物憂い季節のせいにしてみたり
それともきちんと刈り上げた襟足の男らしさに惚れたのだとか

あなたってこおもりみたいな耳してる

あのね

無理に可愛らしさ演出しているみたいだし
やっぱ
自己嫌悪に陥ってしまう

急に涼しく…

ふたりして何か言わなくちゃと無理したのか
そんなことばハモってしまい
思わず笑い転げたテーブルのコーヒーカップたぷんと揺れ

あれっ。人生ってこんなにも船酔いするんだ




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