腕/巧
朝起きたら腕が一本生えていた。
昨日むずがゆかったわき腹から。
にょきっと小さな腕が生えていた。
よりによって最も憎いあいつの
あいつの体と同じになろうとしているのだ。
僕の体はあいつとは違うと思っていた。
なのに腕が生えてしまった。
思い切りひっぱったり
根元をひっかいてみたけれど
腕はしっかり生えている。
カッターを当てて少し刃が食いこむと
腕の血か、僕の血か分からない
赤黒い液体が出てきた。
少し痛いけれど、我慢できる痛みだ。
だから、切断した。
腕がまだ小さいうちに。
絆創膏を貼ると
しばらくして血は止まった。
次の日、ま
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