光をまとっていた/葛西曹達
 
屈託の無い笑顔で
光をたぐり寄せた
他の誰でもなく
君がそこに立っていた

消える直前になって
耳元でささやいた言葉
心の引き出しの中
四つ折りにして仕舞ったまま

大人になるって
どういうことなんだろう
時計台のベンチで
ぼんやり答えが見え隠れ

ただ楽しかっただけの
くだらない一コマが
僕を置き去りにして
遠くへ行ってしまう

いつか約束した
開ける時の合い言葉
思い出せないまま
夕焼けは色を失った

鏡に写ったのは
灰色をまとった自分
ああそうだった忘れてた
ちっとも磨いてなかったんだ

折角当たった光も
全て引き出しに仕舞ってい
[次のページ]
戻る   Point(2)