光をまとっていた/葛西曹達
屈託の無い笑顔で
光をたぐり寄せた
他の誰でもなく
君がそこに立っていた
消える直前になって
耳元でささやいた言葉
心の引き出しの中
四つ折りにして仕舞ったまま
大人になるって
どういうことなんだろう
時計台のベンチで
ぼんやり答えが見え隠れ
ただ楽しかっただけの
くだらない一コマが
僕を置き去りにして
遠くへ行ってしまう
いつか約束した
開ける時の合い言葉
思い出せないまま
夕焼けは色を失った
鏡に写ったのは
灰色をまとった自分
ああそうだった忘れてた
ちっとも磨いてなかったんだ
折角当たった光も
全て引き出しに仕舞ってい
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