ハーフサイズカメラ/……とある蛙
 
泉屋のクッキー缶の中に
アルバムに入れていない古い写真が一枚
モノクロームの色あせた写真には
小さな自分と親父が写っている。

庭の小さな葡萄棚の下
ふざけているのか本気なのか
親父に髪を引っ張られ
味噌っ歯の自分が顔を歪めている。

葡萄棚の透き間からこぼれる光は淡い
写したカメラは兄の持つオリンパスペン
小さなカメラでとった小さい写真
幸せな家族写真のはずだが
アルバムには綴じていない。

父はその後ほどなくして入院し、
その写真はアルバムに綴じられることなく
古ぼけて傷んでしまった。
当時の記憶と同じように

父も母ももういない。
自分を呼ぶ声だけが

母のあの声だけが耳に残る。

いつまでも遊んでいないで

 ご飯だよ。


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