それは悲鳴にも似て/相田 九龍
ろ、ぜろ、ぜろ、ぜろ
封の切られていない郵便物が空を覆った
パラシュートもつけずに人は飛び降りた
あ、
は、
神よ、神様よ、殺して下さい、あなたがあなたを殺せなければ、私が彼を殺すことなど出来るはずがない、神よ、ああ、あなたを殺して下さい、でなければ私を殺して下さい、滴った血で海を赤く染めて夕陽が泣いてしまう吹き飛んだ片足、、、神よ
ひずみを見つけたみたいに
花が開いて、君は笑った
時計が六時を告げた
忘れた思い出が消え失せたときに
もう一度花が咲けばいい
心の中の花が絶えなければ
それでいい
それ以上を僕は望まない
それ以上を、
答え、とその少し先に見える崖と
パラシュートもつけず飛び降りた人たち
憂鬱が、海岸線
咲くこともなく枯れた花が潮風に身を任せて
ぜ、ぜろ、ぜろ、ぜろ
少女が、何も履かずに、瓦礫の上を、歩いていく
私達は、少し遠くでそれを眺めながら、
夕陽が泣く声を聴いて
神様にそっと
私が人間であることを告げた
それは、悲鳴にも似て
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