輪の波/木立 悟
 






草の根元
ひとつかみの声
闇を分ける
指先の青


饐えた氷のにおいがする
ほころび 川岸
小さな小さな穴のむこうに
穴と同じ世界がまたたく


したたりが尽きても
変わることはない
そのままにそのままに
そのままへ咲く


光の点が
ふせたまぶたに沁みてゆく
音が遅い光をすぎ
色を残す


月が瞳を巡り
雨はどこかへ隠れる
うずくまるひとつを
抄いあげるひとつが鳴る


かがやきの合い間
かりそめの姿
声はつづく
手のひらを打つ


わすれがたみ 
ひと呼吸
さなぎ なぎさ
うちよせる


さししめす
さししめす手の帰路
緑の磁石
星おおう指


輪の波 輪の波
尽きぬ声
光に変わる
輪を足す手


けだもの
いつかふたたびうたうもの
隠れた雨を
見つけるもの


朝へ朝へ
ふたつのざわめき
鳴り止まぬ鳴り止まぬ
夜のような夜

























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