実験/はな
これはひとつの実験です
「ほんとう」はいつだって遠くにあるんです
あまりにも遠くにあるものだから
ないのと同じことなんです
痛んだ内臓を内包するぼくは
腐臭が周囲に漏れていやしないか
そればかりが気がかりです
脳は得意気に信号を送り続ける
望んでなんかいないのに
左側で水がはねていた
嫌な匂いのする音が聞こえてる
魚の体温と君の体温とぼくの体温
混ぜてミキサーにかけたら
ちょうどよくなるはずなんです
ママがぼくを抱いて
必死で謝っていた
ぼくの胸ぐらを掴んでいたパパは
土下座をして謝っていた
だからこれは
やっぱり実験だと思うんです
戻る 編 削 Point(1)