覚書・かふく/生田
 
 下腹とは禍福である。禍福とは糾える縄の如しであり、それはまた人生である。

 人の下腹は人によって違う色をしている。顔が表の人生を映すとすれば、下腹はいわば隠しどころであり、当人が目を向けない人生を映す。
 幼児の下腹はそう大した違いはみられず、透明に近い明るい単色であることが多く、原色に近い。
 少年期あたりになると透明さが失せ、色が明瞭になり、幼年期と同じ単色ながら、藍や紺などの色を見せるようになる。
 青年期になると二、三色の混じりをみせるが、暗い色は少なく、また暗くともたいした深みはない。
 中年〜壮年期あたりになってくると、もはや千差万別であるが、あぁ、こういう風に生きてき
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