蛙は帰る/ブライアン
に発明されて以後、数々の死傷者を出し続けてきた
文明のシンボル。諸刃の剣たる車のヘッドライトが
蛙の姿を照らしたときだった。
-声は自分自身のものとなる-
銀河の闇、
1億個の太陽を吸い込む主は、
それでも飽き足らず、自らも一緒に
その闇へと吸い込む。
-反響は存在を反転させる-
メビウスの環を歩くようにして、
蛙は再び自らの声を手にする。
光に照らされた蛙は、蛙にしては大きいかもしれないが、
車にしてはあまりにも小さすぎる。
後ろ足2本の筋肉は緊張する。
飛ぶ方向を間違えるなよ、と。
深海。光の届かない、
母なる胎内。
生物は変態を繰り返してきたが、
彼らが変態するには、人類の命は短すぎる。
盛者必衰の理,
陸へあがることを拒んだシーラカンス。
蛙は、水中へと帰る。
人工的に作られた、コンクリート製の川の中へ。
車は通り過ぎる。
食用蛙の声は、再び闇にまぎれる。
反響と共鳴を繰り返し、
声は、一つになる。
-声が完全にとらえるのだ-。
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