泣き虫/……とある蛙
 
黄昏時

万世橋から昌平橋
煉瓦造りのガード下
ぼーっと浮かぶその灯かり
なぜか涙があふれ出す。

移転した交通博や
やたらモダーンな秋葉の街並に
ヤッチャバの名残を想い出し
なぜか涙があふれ出す。

石垣りんさんの詩を読むと

なぜか涙があふれ出す。

この人以外の詩では涙が出ない。
なぜ出るのか不思議だが。
やはり涙があふれ出す。

四〇の日暮れははや過ぎて、
五〇の日暮れがやって来て
初老の男に、死という文字が 
関係なし近づいてくる。

余裕を持って笑顔でいたい
が、泣き虫になっていて
いつも大きな涙袋
ズルズルズルズル引きずって

ただそのままで生きている。

あ〜また、破れて涙出る。
今はもう
破れ易くなっちまい、
いつも涙があふれ出る。

いつも抱える袋の中は
忘れたはずの思い出ばかり、
どうでもよい思い出ばかり
それが破れて涙出る。


※石垣りんさんの「くらし」という詩の中の「初めてあふれる獣の涙」という行を読んでからだと思う(というような気もする。)。
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