「私」という包み/ゆうか
結合因子が重なって
「私」という包みが生まれた
誰かに閉じられやがて誰かに解かれてゆく
「私」という包みが生まれた
前世では一瞬にして死を知ったとか
来年の八月にはひとつ数字を増やすとか
ルールともいえない答辞を抱えて
ベランダから中学校が見える
「私」という包みには“あそこに3年間通いました”
というラベルがある
黒い制服に黒い鞄を
ルールともいえない日常を抱えて
スニーカーで通った学校が
明々とした電球を灯して立っている
その姿に「私」という包みは、揺らぐ
「私」はたくさんのラベルを集めた
あの学校もコレクション済み
のはずだったが
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)