うずく、まる。/夏嶋 真子
に。
うずくまるわたしは
あらゆる、まる。で。
ドーナツ化現象をかじりながら
山手線のつり革を数える。
(わたしはどこにもいけないわ。)
街の明かりはひとつひとつが存在のサイン
円を描いて走り出す電車に
加速する光は、弧を描いて矢を放つ。
「まるいわたしのひとりを、的。にして射抜いて。」
時々混じる赤や黄色や緑の輝きが
日常を事細かに命令している。
信号の四番目の色が
月の光ならいいのに。
信号の四番目の色を
命令形でわたしに教えて。
四番目の命令がわたしを弱くしてもいいの。
(わたしはどこにもいかないわ。)
体中が
うずく、まる。
その夜に。}
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