オートメイション/吉田ぐんじょう
 
なくなったのだが
機会があって再びその町を訪れたとき
あのとき逃げたあの場所に
錆びた塊があるのを見つけた
形は何がなんだかわからないくらい崩れて
表面には蔦が這っていたが
あのともだちだとすぐにわかった
風化していて見えにくかったが
顔は笑ったままらしかった

ぜんまいが切れたあと
まわしてくれる人がいなかったのだろうか
せめて静かなところへ
移してやろうとも思ったのだが
重くて引きずってさえいけなかった

だからあの塊は
まだあそこにあるはずである

あれ以来わたしは
二度とともだちができなかったから
あれはわたしの生涯で
たった一人のともだちである



2009.6.12}

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