オートメイション/吉田ぐんじょう
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エスカレーターに乗れば段を踏み外す
券売機のタッチ・パネルはいくら押しても反応しない
施錠をすれば鍵を無くす
自動ドアには挟まれる
わたしは
文明というものに適応するように
生まれつかなかったのだと思う
泣き面で夕暮れまで
券売機の前でうらうらしているわたしに
たまりかねたように駅員さんがやってきて
代わりに切符を買ってくれた
かっちりとした駅員さんは
たしかにひどく文明的で
てきぱきとうごくたびその体からは
歯車の噛み合う音が聞こえてくるようであった
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いつもはあまり人の通らぬ表通りから
らうらうと子供の歌う声と
ざわざわと人の行き交う
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